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市場機能の封殺論=分かるようで分からない
 福井総裁が先週末の会見で「下限割れ容認」の理由として何度も触れたが、私にはよく分からない。審議委員の間でも、市場機能の低下と、それに伴う副作用(資産バブルとか)が指摘されるが、どれもこれも筋違いではないかと思っている。市場機能の封殺で懸念されるのは以下のような事柄であろうか
1 短期金融市場の取引機能の低下
2 資金繰りのモラルハザード
3 信用スプレッドの縮小
4 長期金利の低下
5 土地価格のバブル的な上昇
などであろう(他にもあればご指摘を)
以上の事象はしかし、量的緩和の「量」によるものか、ゼロ金利によるものかは判然としない。1は、これだけ量を出しているけど無担保コール取引はそれなりに残高があり、別に機能は低下していない。解除したら大変だという人もいるが、それは慣れの問題であり、取引妙味があれば短期市場に人は集まり、取引は円滑に進む。仮に混乱(金利の上昇)があっても、今はロンバードが歯止めになっている。2は、そういうことがないように考査局があるじゃないか。3は、まさに量によるものか、ゼロ金利によるものかが問題で、恐らくは後者の要因が大きいだろう。量を多少減らしてもスプレッド拡大は見込みにくい。まさに利上げが必要だ。4は、時間軸も含めた効果でしょう。5は、局地的にバブルの様相があるかもしれないが、局地的現象は金融政策で対処すべきものではない。むしろ日銀が市場原理を重視するなら、行き過ぎが自律的に修正される事態を待つべきでは。収益還元的に行き過ぎた高騰は、修正されるはず。そんなことはないと日銀は思っているのかな。
 とことんオペを打つと市場機能の面で何かまずいことが起きるのだろうか。現状の調節の枠組みでは、ターム物金利がベタッとなる感じが強まるだけのような気がする。まさか短資会社の経営が日本経済より心配だということはあるまい。むしろ、とことんオペを打つと目標下限割れが回避されてハッピー、ハッピーだろう。なお日銀マンも実は市場機能の封殺論はうまく説明できない。金融調節の現場が可哀想? それは否定しない。だが、クビになるわけでもない。もっともっと可哀想な現場の人は民間にはたくさんいる。
 うーん、一体何が問題なのか。これだという市場機能の封殺、ご存知の方がいればご教授を。
by bank.of.japan | 2005-05-23 22:06 | 日銀 | Comments(7)
Commented by ??? at 2005-05-23 22:34 x
本石町日記さん、また書き込みさせて頂きます。福井総裁がどのようなことを考えて発言したのかはよく分からないので、以下は私自身の考えです。量的緩和政策において、効果と副作用が表裏しているのは、おっしゃるとおりです。ただ、短期市場は、参加者が限定的であるため、日銀と短期市場の間にはゲーム的な状況が成立しがちではあります。そうしたもとで、日銀が残高維持のためにいくらでも長い供給を行うということになってしまうと、短い供給は全て札割れになり、日銀はどんどん長い供給を行っていかなくてはならないかも知れません。これは、無数の市場参加者を前提とした世界とは異なってくるということです。そうした状況を市場機能の低下と捉えれば、それを回避するために、残高の一時的な下限割れを許容するという対応はアリかなあと考えています。
Commented by bank.of.japan at 2005-05-24 00:32 x
???さん、どうも。ご指摘の状況になる可能性はゼロではないとは思いますが、恐らくはターム物金利がどんどんゼロにつぶれていく構図でしょうか。そうした状況が市場機能の低下と称する場合、それは経済的にとても困ったことなのか、仮に困る事態だとして、具体的な困り方が今ひとつピンとこないわけでして。もっとも、現状のオペ体系でとことんやってみて、1年以下のオペがすべて応札ゼロとなった(そこまでやらずとも残高維持は可能かもしれないとは思いますが)のなら、さあどうするか「また書き」か、オペ期間延ばすか、という話になるのではと考えるのですが。とことんやれば「程度」で織り込めないほど大きく下限を割るのはちょっと想像しにくいとは思っています。
Commented by ??? at 2005-05-24 01:13 x
淡々とこれまで通りの供給を続けていって、それで大きく下限を割り込まなければ、良かったという話では。その時点で、金融市場調節方針をいじったことが、とても困ることになるとも思えません。今回の対応については、早く量的緩和政策から抜け出したいという思いだけが一人歩きしなかったことが評価できるように思えるのですが。もともとは、昨年末からのやや本筋から外れた議論が問題。今回の対応で、それが収束してくれたら良いと思います。
Commented by bank.of.japan at 2005-05-24 12:09 x
「本筋から外れた議論」をしている向きは、最近は言行が一致してやっと反対票を投じていらっしゃるようで、それは放置が正解ではないかと。そうすると、市場も放置しますから、雑音ではなくなっていくと思われます。ところで「量的緩和から早く抜け出したい」という“思い”は、総裁会見などで痛いほど伝わっているのが実情で、それもあって今回の対応は減額への布石ではないかとの思惑につながっている面があります。「また書き」が警戒されないようになるためには、今後の調節が妙な解釈を生まないように余程注意してやっていかないといけないような気がします。
Commented by walrus at 2005-05-24 13:44 x
「出口政策下における非対称性」の一言で済めば日銀も楽なんでしょうけど・・・
Commented by bank.of.japan at 2005-05-24 14:26 x
walrusさん、それは「量的緩和のドップラー効果」(緩和と叫んで引き上げながら接近し、技術と小声で下げながら遠ざかる)ですね。本業ネタ、ちょっと披露してみました。いかがでしょうか?
Commented by walrus at 2005-05-24 14:45 x
bank.of.japan さん、秀逸です。
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