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クルーグマン教授、好調です=水準の重要性、楽観論の戒め、インフレ懸念の排除etc
 日銀文学はモメンタムより水準の低さを強調して面白い技を見せてくれたが、しばらくぶりにチェックしたクルーグマン教授もこちらで足下の回復が急でも、そもそも水準がメチャ低いのだからね、と諭していた。日銀&クルーグマン教授、ベースマネーの解釈もそうなんだが、このところますます相通じてきたような感じです(苦笑)。
 クルーグマン教授がネタに使ったのは、住宅着工が前月比で17%急増したこと。着工件数の水準が大幅に減ってしまった後、ちょっとした増加でも前月比の変化は大きい、ということを解説している。
「If we’re building 6 homes a month nationwide, and that goes to 7, it’s a 17 percent rise — but makes almost no difference in real life」
→全米で月6件家を作り、それが月7件になっても、実体ほぼ変わらないだろ。でも、変化率は17%増加なんだよね(チャートで見れば一目瞭然)。
 日銀もこの足下モメンタム(変化)がクローズアップされるのを避けるために文学を駆使したわけですね。まあ、面白おかしくエントリーでは書いたが、付け加えると、ヘッジ文学としては正しい。本日公表した議事要旨(5月21、22日分)で、ある委員が「経済情勢の現状評価について、『上方修正』という方向感のみ強調されかねないことから、情報発信の際には、経済活動の水準評価も含め、丁寧に説明していく必要がある」と述べていた。解釈通りでありました。
 次の教授ネタは数日前のこのエントリー。表題の通り、経済運営はこのままいけ、という主張だ。
 危機的状況が緩和されて、さっそくFRBやオバマ政権に政策転換を要求する声が出たことを受け、教授は(早過ぎる政策転換で失敗した過去を思わせる)デジャブのようで、無視しろ、と指摘している。大まか以下のような論点である。
・主要国が流動性の罠に落ち込むのは今回が三度目。
・最初の1930年代、米経済はいったん回復し、そこで政策転換されて再び落ち込んだ。
・二度目は1990年代の日本。この時も拡大する財政が緊縮化(97年の増税)し、景気はダメになった。
 だから同じ過ちを犯すな、という主張である。まあ、同感です。
面白いのはインフレ懸念に反論する以下のところ。これは前に書いたエントリーの続きみたいなもの。
「What about the claim that the Fed is risking inflation? It isn’t. Mr. Laffer seems panicked by a rapid rise in the monetary base, the sum of currency in circulation and the reserves of banks. But a rising monetary base isn’t inflationary when you’re in a liquidity trap. America’s monetary base doubled between 1929 and 1939; prices fell 19 percent. Japan’s monetary base rose 85 percent between 1997 and 2003; deflation continued apace」
→FRBがインフレのリスクを冒している、との主張はどうすればいい? そんなことはない。ラッファー氏はどうやらベースマネーの激増を見てパニくっちゃったようだ。でも、流動性の罠ではベースマネーの増大はインフレ要因にならない。1929-39年に米国のベースマネーは倍になったが、物価は19%下落した。1997-2003の日本はベースマネーは85%増えたが、デフレが続いただろ。
 日銀諸氏の気持ちは分かる(苦笑)。もっと早く言ってくれ…。
by bank.of.japan | 2009-06-19 20:34 | FRB&others | Comments(0)
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