赤い新聞(FT)の反省で思うこと=気持ちは分かるが…(追記あり)
 himaginaryの日記さん経由で英FT紙(赤い新聞)のエディターがバブルの危険性を見抜けなかったことを反省しているのを知った。内容はhimaginaryさんがまとめていらっしゃるので、そちらをお読み頂きたい。私自身は、世界の経済報道をリードするメディアとして、木鐸機能を果たせなかったことへの後悔の念は良く分かるが、かといって木鐸意識を強く持つ必要はないのではないかと思った。
 下のエントリーにも関連するが、イエレン総裁が詳しく述べているように①バブルかどうかは優秀な人材が集まった中央銀行でも良く分からない②白川総裁が述べるように破裂してもすぐには分からない-ものであり、「to be the canaries in the mine」、即ち経済メディアが炭鉱のカナリヤのような役割を果たすのは至難の業であろう。バブル生成を察知し、警告まで発するにはメディアが中央銀行や経済学者、金融当局者よりも先読みに関して優秀である必要があり、そうした人材の確保は現実的ではない。
 仮にFTがこれから木鐸役になろうと努力しても、マス媒体である以上、うまくその役を演じられるかは疑問のような気がする。まず世界中にちらばる多くの末端記者が木鐸的な観点を持ちながら取材するのをうまくコントロールできるのか疑わしい。記者はそれぞれの分野でストレートニュースのネタを追っている動物であり、それぞれに木鐸機能を埋め込むのは容易ではない。
 無理に木鐸役を果たすと、恐らくは経済が成長する局面ないしはアセット価格の上昇局面において逆張りの編集方針を取ることになりかねず、このスタンス自体が偏向報道となってマス読者を誤らせる恐れもあるだろう。下のエントリーでもちょっと触れたが、妙に清貧的な風潮を広めるようにも思う。または、オオカミ少年のような存在になって信頼をなくす恐れもある。
 私個人としては、マスコミは得てして人々の期待の振幅を大きくする作用が大きいので、「妙に煽らない」ということで十分であろうと考えている。これは実はマスコミにとってはかなりハードルが高い。「見出しでの勝負」をかなりあきらめる必要があるからだ。大勢の読者の目を引く見出しを無理にひねり出すことはしない、それだけで随分と世の中は静かになるような気がする。
 まあ、この点に関しては、マスコミは読者数や広告料に比べて明らかに超供給過剰なので、そのうちどんどん淘汰され、それに伴って煽情度合いも薄まるので、ほっとけばいいという気もする。この場合、マスコミの寡占化によって情報が統制されるリスクがあるか? 私は心配していない。既にネットが伝統的マスコミを代替する機能があるからだ。情報媒体のバランスが良くなるんじゃなかろうか。

ところで、バーバー氏の以下の書き出しは私もこちらで述べたが、激しく同感です。
「These are the best of times and the worst of times to be a financial journalist. The best, because we have a once-in-a-lifetime opportunity to report and analyse the most serious financial crisis since the Great Crash of 1929. The worst, because the newspaper and television industries are suffering, not only from the shock of a recession but also from the structural shock of the internet revolution」

追記 バブル回避の難しさについては、ご覧になった方も多いかもしれないが、磯崎さんのこちらのエントリーが非常に参考になる。過去データをいくら充実させても、予見しなかった「黒い白鳥」が突如表れてみんなびっくり、ということになると思う。明日は今日と同じ日になる可能性は高いが、しかし違う日になるかもしれない。私の人生はブラックスワンだらけで、もう本当に大変です(苦笑)。草薙君もいつもの酔っ払いになる日が、突如として逮捕されるブラックスワンな日になってしまったのでありましょう。高橋洋一さんもブラックスワン的な運命だと私は思っております。
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by bank.of.japan | 2009-04-28 22:09 | マスコミ | Comments(10)
Commented by 小野(東京都港区) at 2009-04-28 22:57 x
中央銀行に本当に「今バブルか否か」意見のべるって仕事としてありましたっけ?
仮にもし本当にそういうつもりで意見のべてたとしても、100%真実と疑わず
聞いてる人々法人団体、どの位存在してるだろうか。多くて7割がた真実と聞いてても、
のこり3割は疑ってるハズ(というより「疑ってるワケ」、ですかね?まぁどっちでも良いが)。
まして中銀以外、ほかの専門家なり期間なりetcetcいかなる権威あるとされる存在も
同様かそれ以上何がしか懐疑を(たとえほんのわずかにしろ?)抱かれても不思議
でもなんでもない、「100%信じるなど、”高値ハメ込み”、のかっこうの餌食」にすぎなぃ
んじゃないかナと。よく言われる事ですが。未来を100%的中させる事と利食う事は別。
Commented by 小野(東京都港区) at 2009-04-28 23:08 x
バブルや経済成長の予測として僕がすぐ思い出すのは、グリンスパンの「根拠無き熱狂」や
「インフレ無き経済成長」ですが、印象としては、成長、バブルよりは鈍化、停滞
崩壊(!?)やそのきざし、等々のほうが「やっぱり」というかアナウンスメント効果としちゃ
というかよく声は通るんではないかって気もする。バブル、経済成長のあいだは、
「人々は多くはそのまっさいちゅうにいるため満喫してる場合が殆ど」耳傾けるような
必要も無いといえばない、それに対して不況停滞鈍化崩壊(??)等々は、
同じくまっただなかにいる人々は「いつ終わる(終えられる)」か機にし続けてるし、また、
居ない、関係無い人々も、「いつ、”おはちが回って来ぬとも限らない”」、と心配と、
そういうことなんじゃないか?って気もします...そんな事だからどでかくは稼げないのかな?
Commented by linate at 2009-04-29 12:50
日本人ならば直感的に、普通のサラリーマンのおっさんが住宅の転売でもうけたとか、数件の住宅投資ポートフォリオを持っているとか、頭金ナシで住宅ローンが組めるとか、近所のEV/EBITDA8倍とか9倍・スプレッドは100bpそこそこでの価格でPEが上場企業買いあさっているとか、キャップレートが2%という水準で不動産が取引されたとか、エクイティブリッジローン、コベナンツライト…、こういう言葉や事象を聞けば、ああバブってるなあ、大丈夫かなあ、と思った人もいるはずなのです。しかし、結局彼らは日々の論調で日本の経済的低迷をバカにするだけで、日本の失敗から何も学んではいなかった。「自分たちは日本ではない。」と根拠なく叫んでいただけで。その意味で、彼らの方が遙かに愚かな連中だと思ったものです。
Commented by 円は強い子 at 2009-04-29 14:38 x
基準は私もしくは一般的な庶民が不幸になるかどうかの話なんだと
思うので、バブルが危険とかっていうのを未然に防ぐには庶民への
教育がもっとも良いのではないかと思う。
規制等でバブル自体がまず起こらないようにすることはできても
壮絶な大不況ではやはり皆が不幸であり、それでは無意味なこと。
マスコミは信用されればされるほど一方向にばらばらな意思を揃える
ので警告や予測などを行う事自体慎むべき。某新聞のように何を
書いてんだフフン程度の予測記事がもっともいいと思う。
Commented by 小野(東京都港区) at 2009-04-29 15:01 x
経営者や企業という立場からしてみれば、「保有するアセットの上昇」、”期待し続けてたり”
”みこんでたり”、してるのはあまり望ましくはない、その一方
逆に同じく保有してるアセットの
「含み損」は、常に大いに気にし、”続けてなくちゃならない”、と、そういうことから

(、それともオレだけの固定観念、かな?)「バブル、経済成長」はあまり気にしない
 ”よう なるべく こ こ ろ が け る が(、でも笑みは堪え切れぬって話等も?)”

「不況停滞鈍化崩壊(??)」等々はおおいに気にする、し続けてなくちゃならない(?)

感じるのかもシレマセン・・・・・お役人(ら)や麻生とその世襲なかま(ら)も
いずれ【 勲 章 】とるンだろうな-ぁ・・・(勲章の)「希釈化(or希薄化=Dilution)」
「質的緩和」???ナーンテ^^;ォっとぉ!m(_ _)m
Commented by PK at 2009-04-30 12:20 x
しかし、本石町さんは、リーマン後の流動性の蒸発に関して、一番はやく判断をしましたね。僕は金融機関間の実務は知らないので、判断できなかった。
なった後に何が続くかは理解できたが。
日本のマスコミはいまだに分かって無いと思う
この半年で、日本のどの業界がダメか、どの学者が良いか悪いか ホント分かった
電機はダメだ 労組もダメ ミンスもダメだ
自動車と自民党はよくやってる
Commented by Teddy at 2009-04-30 14:21 x
bank.of.japanさまに楯突くわけでもないですが、供給過剰になると<いずれは>淘汰で扇情的な見出しが減る可能性もないではないでしょうが、供給過剰な状態のうちは、つまりは読者の関心をいかに惹き付けるか、で勝負な局面が非常に目立つのではないか、と愚考します・・・
Commented by 相場師 at 2009-04-30 20:42 x
株の怖さを知らない若い人や主婦が大もうけした話を本にし始めたらバブルですね。ピークがやってきたらドデン売り準備。
Commented by bank.of.japan at 2009-05-01 00:13 x
linateさん、どうもです。金利オンリーローンとか聞いて、バブッているなあ、と私も思いました。ただ、破裂しないとバブルとは言えない面もあり、警告は難しいものです。それにしても、これほどの大破裂を起こすとは…。

円は強い子さん、どうもです。地道な努力としては、金融教育の普及でしょうが、やり過ぎると清貧化してパッとしない経済になってしまいます。難しいものです。

PKさん、どうもです。ありがとうございます。

Teddyさん、どうもです。目先はご指摘の通りだと思います。うるさい状況続きそうです(苦笑)。

相場師さん、どうもです。書店の投資コーナーはウォッチ対象かもしれません。

小野さん、どうもです。もう少し簡略して頂くと助かります。
Commented by モンテカルロ・モナコ at 2009-05-01 01:57 x
個人向け一戸建て住宅なら、収益換元法(オフィスビル)も不要でしょうから、一人当たりGDP成長率からの乖離で価格のそこそこ狂乱振りも判定できるのではないでしょうか?
錯覚を冷ますにも労力が必要でしょうけど。

ちなみに、高層ビル・高層マンションって、東京都の土地面積を広げるとしたら、更地(未開発)の価値はどうなるの?(人口一定として)
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