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バーナンキ議長の「市場機能論」がマジなら…
 バーナンキFRB議長の「質的緩和」は「市場機能の回復」を狙ったものだが、私自身はこの市場機能論は一応は表立っての理由であり、議長の本音はリスク資産の購入を強めながら量(B/S)の増大を図っていきたいのではないか、と見ている。質的緩和(劣化)を通じて量を増大させると、日銀のやった質を劣化させない量的緩和よりも効果は高いと考えられるためだ。まあ、私はそう思ったわけだ。
 ただ、どうもそうじゃなくてバーナンキ議長は「質的緩和」にマジなんじゃないかという見方もある。量は増えるが、これはリスク資産の購入の付随的なもので、量の増大には意味を見出していない、というわけである。以下、連銀ウォッチのTim Duyのエントリーより。
 「I believe this is one reason the Fed has shied away from the term "quantitative easing." Note Bernanke & Co. always place the expansion of the balance sheet in terms of the improving the functioning of private capital markets. See Federal Reserve Chairman Ben Bernanke's speech last Friday」
 この文章の前のところから訳すと、「(FRBの国債購入(例の30兆円)は財政マネタイズとみられているのだが)私はFRBにその意図があるとは見てない。FRBは“量的緩和”から距離を置いているし、バーナンキ議長&その同僚らは常にB/Sの拡張を民間クレジットマーケットの機能改善のためとしているからだ。実際にバーナンキ議長は以下のように述べている」
 で、議長はどう言っているのか。
 「These purchases are intended to improve conditions in private credit markets. In particular, they are helping to reduce the interest rates that the GSEs require on the mortgages that they purchase or securitize, thereby lowering the rate at which lenders, including community banks, can fund new mortgages」
 この部分、簡単に訳すと、「(国債やMBSなどの)買い取りは民間クレジット市場の状況改善を狙ったものだ。これらの買い取りは住宅ローン金利の低下をサポートし、金利を低下させることで新たな住宅資金を提供できる」といった内容。
 では、バーナンキ議長が「市場機能論」にこだわるのはなぜか。Tim Duyはこちらのエントリーで「For Bernanke and Geithner, there are no bad assets. Only misunderstood assets」と指摘している(このエントリー、なかなか良いのでお勧めします)。バーナンキ議長やガイトナー長官にとっては不良債権なるものは存在せず、単に市場がミスプライスしているだけ、と解釈しているのではないか、というわけだ。従って、市場がまともに機能するようになれば不動産価格は元に戻って問題は解決する、それで一生賢明に「市場機能の改善」を唱えて質的緩和に励んでいる、との見立てだ。もちろんTimはそれじゃあダメで、市場機能が戻っても家計部門の資金需要が活発化することはないと見ており、結果的にバーナンキ議長はマクロ経済に働きかける「量的緩和」をやるだろうと予想する(この見方に私も賛同する)。
 ちなみこのエントリーはクルーグマン教授もこちらで引用して、ガイトナー長官を批判している。ただし、同教授はFRBの国債買い入れは「量的緩和」だと評価しているようだ。
 私も、そして知り合いの日銀マンらも国債買い入れは量的緩和だと見ているのだが、もしバーナンキ議長がTim Duyが言うように市場機能論にマジであるとすると、これはかなり市場との対話が難しくなるだろうと思う。市場が国債買い入れなどリフレ政策と認識して反応する一方で、FRBが市場機能を前面に押し出していくと、長期金利の上昇というリフレ政策に対する正しい反応はFRBには困ったことになる(金利低下を狙っているので)。また、市場機能論に立脚した質的緩和は場合によっては市場が正常化すれば自動的に緩和が修正されていく、という印象も与えるので、市場は引き締めと受け止める可能性もある。市場期待の安定化が難しい側面をはらむ。
 市場機能論で国債を買うというロジックは、私個人としてはイールドカーブをフラット化させてマクロ経済をサポートする、という説明の方が分かりやすいのではないかと思う。この時に日銀が導入した「時間軸政策」も取り入れるとフラット化させたい意図が鮮明に伝わるのではないか。
by bank.of.japan | 2009-03-28 18:28 | FRB&others | Comments(13)
Commented by Cru at 2009-03-29 13:41 x
ミスプライスであるとの判断に市場を誘導すれば市場機能はもどるかもしれないが、家計部門は不況シフトしてるので需要期待投資は増えないだろう。そこで、「ヘリコプター・ベン」が何をやるかは見ものですね。(って、人ごとじゃない)
Commented by a-kun at 2009-03-29 22:28 x
個人的にはこの半年のバーナンキFRBの政策は1997年冬から翌年にかけての日銀に近い、と思っています。金融危機からの脱出が最優先で、デフレ/インフレはどうでもいいんじゃないでしょうか。(さすがに「ミスプライスがあるだけ」とは思っていないとは思うのですが。)
そう考えてみますと「意外や意外、バーナンキは本気で『市場機能論』を信じている」、という大穴に賭けたくなりますね。実際のところ、バーナンキは「政治家」然としてきたように思えてきましたので、ダブルミーニングをあえて発信してどちらにも逃げられるようにしている気がします。
なおもう一つ大穴に賭けるなら「FRBが量的緩和に追い込まれるとき、バーナンキはそこにいない」というのはどうでしょう。
Commented by Cru at 2009-03-29 22:43 x
「バーナンキは本気で『市場機能論』を信じている」というよりは、「バーナンキは本気で市場に『市場機能論』を信じさせる方向に賭けている」(でも「量的緩和」だと評価して」もらっても良い)というところなんではないかと思ったり。
Commented by bank.of.japan at 2009-03-30 00:01 x
Cruさん、a-kunさん、どうもです。付け加えるに、バーナンキ議長はイエレン女史のように量的緩和を真っ向は否定しておらず、市場構造の違いから米国では(量的緩和ではなく)質的緩和をやっている、との言い方をしておりました。推測するに、議長は内心では日銀型量的緩和も選択肢にしているのではないかなあ、と見ております。米政策運営、まだ紆余曲折がありそうです。
Commented by bank.of.japan at 2009-03-30 00:04 x
a-kunさんに追加ですが、「ダブルミーニングをあえて発信してどちらにも逃げられる」というのは、私もそう思ったりします。
Commented by PK at 2009-03-30 08:52 x
経常収支でアメリカと日本は違う
しかし、バブルがはじけて不良資産を抱えたということは同じ

EUは言うことを聞かない=ドルを必要以上に持たない
日本は従うように見えて中立(IMF拡大=ドル節約に走っている)
中国は消極的=判断保留して成り行きを見ている
だから、米国はこういう態度になる
Commented by 害債 at 2009-03-30 14:23 x
なるほど。バーナンキ議長らが不良資産ではなくミスプライスされた資産だという認識であるというのは、会計ルールの変更の話と平仄があいますね。ただそれですべてが解決すると思うほど彼らもお人よしではないように思います。
Commented by PK at 2009-03-30 15:26 x
アメリカのことなんてどうでもいから、日本は食糧や資源と交換性のあるもの・状態・状況・繋がり・貸し借りを作っておくべきだと思う
米国のように軍事力で資源を動員できる国ではないので、相手国が交換に応じる条件を整えておくべきだ
Commented by bank.of.japan at 2009-03-30 22:37 x
害債さん、どうもです。本音ではリフレ政策を志向しつつも、表立っては市場機能論を言っている、という感じでしょうか。まあ、本気で市場機能論だとちょっと期待外れ?ですが(苦笑)。

PKさん、どうもです。まあ一般論として付加価値の高いものを作れるのは、それに越したことはないと思います。
Commented by PK at 2009-03-31 08:06 x
僕は今回の不況は陰謀論を取っているので、太平洋戦争で補給路を断たれた状況と同じになると思っています。
韓国なんかも、白人が日本締め付けように仕立てた経済で、完全な近隣窮乏化政策とFTAという保護貿易を白人が韓国に許しているのだと考えています。
あの国は、白人の植民地政策のショーウィンドウで、分断統治・宗教利用・洗脳・情報操作、ありとあらゆる手法がごった煮になった国です。
あれだけ自己認識ができず、欧米に利用されている国も珍しい。
振り回された憎しみの情念を全てを日本に向けている
インドとパキスタンの間に見られる構図ですね
日本語世代が生きていた時代は、東アジアの団結は少しは維持できましたが。
アジアは馬鹿です
Commented by PK at 2009-03-31 16:37 x
私は、為替の問題は人間の価値の問題だと思っているので、
韓国のような為替を下げた上に、ワークシェアリングまでやる連中を見ると
反吐がでる
あの馬鹿どもは、ホントに李朝から何も変わってない
他にもやることがあるだろうが。

北、核爆弾小型化に成功か=日本全土が射程のノドン-米韓当局

米国民主党の時には、日本はこの世の地獄
前の戦争に、バブル崩壊後の円高地獄

いよいよ分断統治の最終仕上げで北朝鮮を使った核攻撃だな
ワンクッション置いた攻撃だ

在日米軍で日本を縛り、朝鮮人に弄り殺させるつもりだ

竹島、従軍慰安婦、南京虐殺と朝日を使った工作の仕上げだ
Commented at 2009-04-01 08:23 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by bank.of.japan at 2009-04-02 00:18 x
非公開さん、どうもです。ご指摘の件、検討中です。
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