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米国版rinbanの変遷=おまけ・クルーグマン教授の失望&替え歌
 先般、米FRBが3000億ドルの米国債買い入れを発表した。もともとFRBは「クーポンパス」(国債買い入れ=日銀のrinban)という手段を持っているが、一昨年来の金融危機でオペ体系が滅茶苦茶になる中でクーポンパスはどうなったかよくわからなくなった。今回の買い入れを考えるに当たり、これまでの経緯を超ざっくりまとめみた。記憶頼りなので、間違いあればご指摘を。
・危機前 普通にクーポンパスをやっていた。位置付けは日銀と同様(銀行券に合わせた長めの資金供給)
・危機発生からリーマンショックまで
 流動性危機が勃発して潤沢な資金供給を開始。ところがFRBは日銀売手のような機動的吸収手段がないので、資産から国債を外すと同時に民間債務を受け入れて流動性を供給。国債は売り切りを伴いながら残高が縮小(この局面でクーポンパスは休止)。この間、FRBのB/S規模はほぼ一定。
・リーマン後と今
 上記の構図が続く中、MBS買い切りとか発表。B/Sは急膨張。そして国債買い入れを発表する。従来のクーポンパスと異なるのは、国債の買い入れ規模と期間(3000億ドルを半年で買う)が明示されたこと。ということは、従来の長めの供給というものではない。では、その目的は何か。
 FOMCは「to help improve conditions in private credit markets」と位置付けている。直訳すると、民間クレジットマーケットの状況改善のため、である。このまま素直に受け止めて、改善メカニズムを考えると、国債を買う→金利が下がる、というルートであろうか。これと重なる面はあるが、民間が買うであろう国債をFRBが買い、買うものが乏しくなった民間は別なものを買わざるを得ない(ポートフォリオリバランス)というルートが考えられる。日銀のやった量的緩和と似たような効果を狙っているように見える。
 まあ、みなさんもそうかもしれないが、財政のマネタイゼーションなのではないかと思う。ヘリコプターマネーですね。興味深いのは、そう言わずに国債買い入れをも民間クレジット改善のため、と位置付けていること(「質的緩和」の一環)。財政マネタイズと位置付けた場合、それがドル安を誘発することを恐れているのだろうか。FRBの対応については、為替相場が一番素直に反応したように思われる。じゃぶじゃぶ→ドル安。教科書的には、財政マネタイズ→リフレ政策で有効→長期金利は上昇、となるのだが、とりあえずは金利は低下。リフレ政策の効果を消化する前に需給ひっ迫が響いた格好である。

おまけ クルーグマン教授は引き続き金融政策への言及はなく、改めて金融システム対策への失望を表明(Despair over financial policy)している。これはガイトナー長官が近く公表する対策が国有化による抜本処理ではなく相変わらずゾンビ銀行を生かしたままの措置になるため。「日本よりうまくやりたいが、そうできる自信がない」というモードが続いている。
 金融危機に正面から立ち向かえ、としぶとく主張するクルーグマン教授であるが、案の定というか「あなたに財務長官になって欲しい」という替え歌がCalculatedRiskに登場していた。"Hey Paul Krugman"というタイトルなのだが、これ、なかなか良いです。ご視聴を。
by bank.of.japan | 2009-03-22 17:35 | FRB&others | Comments(14)
Commented by a-kun at 2009-03-22 19:12 x
自分のところにも似たようなことは書きましたが、何でFRBはわざわざこんな面倒な言い回しをしたがるんでしょうね。そこが不思議だったりします。
Commented by PK at 2009-03-22 22:09 x
米国債バブルの始まり
デブの米国人が痩せて米国民が相応の社会資本で守られるまで、米国債は本気では買えない
Commented by 害債 at 2009-03-23 02:48 x
calculatedRiskにもありましたが、やはりクルーグマン氏は部者として積極的な発言を続けるほうがいいのでしょうね。内部者になるといろいろ大変でしょうから。
Commented by EURO SELLER at 2009-03-23 08:14 x
>やはりクルーグマン氏は部者として積極的な発言を続けるほうがいいのでしょうね。内部者になるといろいろ大変でしょうから。
総裁にはなりたがらない小沢一郎そっくりですね。(笑)
Commented by 害債 at 2009-03-23 08:48 x
x部者 ○外部者。失礼しました。たしかに小沢サンそっくりですね(笑)
Commented by Baatarism at 2009-03-23 13:00 x
日本における財政のマネタイゼーションへの反発は、日銀や与謝野大臣からエコノミストやネットの声に至るまで(笑)、非常に根強いものがありますが、アメリカでも議会やマスコミなどでは同じような反発が強くて、バーナンキも正直に言えない状況なんでしょうか?
Commented by walrus at 2009-03-23 20:56 x
マネタイゼーションの帰結が国家債務残高の累増と信用乗数の低下であることが日本のBS調整過程における帰結です。米市場参加者がオバマ予算の効果を藁をもつかむ気持ちでcheer upする場合に一定期間、株高、債券安が生じる可能性が生じますが、そもそも財政出動による国債増発の裏に未曾有のデフレギャップ(民間資金需要の大幅減退)が存在していることを踏まえると、長国買切りの分は中長期的に国債需給逼迫に直結する可能性大です。日本では、一連の財政支出の初動となった92年宮沢パッケージに対して自律成長の起点に成りうるとの見方から不況下の株高が一定期間生じましたが、こうしたパターンが米国で生じる可能性は、米国人が日本の経験を十分に勉強してしまったであろう点において、極めて低いと考えられます。
Commented by PK at 2009-03-23 21:48 x
リフレ派は、経済史の人たちがやってる新興宗教で、だんだん神がかりになってきました。日銀は祟りにあうと口々に罵っています。
マネーはストックで、交換の動機がなければフローは生じません。
今のところ動機になりうるのは、貿易赤字です。
政策的にはそこを強めるのが正しいと思いま

ただ、結局は、この国の一番の問題 弱気の原因は、マルクス主義と在日米軍基地に行き着くだろうけど。
Commented by bank.of.japan at 2009-03-23 23:07 x
a-kunさん、どうもです。同感です。単純に金利を下げたいなら、日銀がやった時間軸政策も有効であると考えられます。国債購入まで市場機能回復に結び付けるのは迂遠なロジックで、アナウンスメント効果も弱いように思います。FOMC内での意見統一が難しいのでしょうか。

害債さん、どうもです。政策当事者になると、クルーグマン流の切れのよさがなくなるかもしれません。ややさびしいですね。

EURO SELLERさん、どうもです。なるほど(苦笑)。
Commented by bank.of.japan at 2009-03-23 23:16 x
Baatarismさん、どうもです。その前にFOMC内での意見が統一されていないのかもしれません。財政マネタイズ→プリントマネー→ドル安→金買い(ドル不安)という見方が根強いものの、このメカニズムはリフレ政策がある意味正しく捉えられている、とも言えます。

walrusさん、どうもです。クルーグマン的には、財政出動が足りない(国債発行が不足)ので、結果的に金利が下がる可能性は高いかもしれません。日本の経験をたどるのでしょう。

PKさん、どうもです。祟り=不幸という意味では欧米中銀の方が相当な不幸に見舞われているように思います。特にECBとか。

Commented by PK at 2009-03-24 08:53 x
あと、まったく関係ありませんが、
日本政府が常任理事国を本当に狙うなら、在日米軍を追い出さないとだめです。
米国から見て、日本は地政学的に重要ですが、日本を米国側に引き止める場合、在日米軍と代替的な方法が常任理事国のポストだからです。
戦前は在日米軍基地はありませんでした。ですから常任理事国になれたのです。戦後も同じです。
Commented by Teddy at 2009-03-24 15:12 x
bank.of.japanさまの論点につき、Fedは全く明快にしない言い方ですが、BOEの量的の言い方も面白いものがあって、同行サイトでは、「この資産の取得は、紙幣を追加的に印刷して行うものではなく、BOEは電子的におカネを創出し金融機関の預金に資金を振り込むことで行う」(大意)
これは、輪転機を回しているのではないですよ、という意図した世論の誘導なのか、淡々と、事実を「客観的に」記述したまでなのか・・・
Commented by bank.of.japan at 2009-03-24 21:14
Teddyさん、どうもです。まあ、振り込みになるのは当たり前のオペレーションですが、そこを強調するところが何とも面白いですね。まあ、英国には初めての超緩和策なので、誤解を防ぎたいという気持ちが強いのかもしれません。
Commented by Teddy at 2009-03-25 09:04 x
bank.of.japanさま、コメントありがとうございます。経済的には同じことを、わざわざ断るのがなんとも、ですよね。
ところで、WSJ.comでの23-24日の「最もポピュラーな記事」のトップは、周小川論文について触れた記事でした。
一方、ボルカーは「中国は買ったからそれだけのドルを保有しているんでしょ、アメリカのせいにするのはおかど違い」と突き放し、と。
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