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「量的緩和政策」をやった場合の技術的論点=FRB議事要旨より
 FF誘導目標を0-0.25%にしたFOMC(昨年12月15、16日開催分)の議事要旨が公表された。これは既に報道済みで、ドラめもんさんも取り上げられたが、追加的にちょっと技術的な論点を簡単に考察してみた。なお、この議事要旨は材料テンコ盛りで、議事録も読んでみたいほど内容が濃いので、興味ある方は直接ご覧頂くことをお勧めします。
 まず量的緩和、すなわち準備預金またはベースマネーなど量的指標にターゲットを設けた「量的緩和政策」(金融政策として目標のある量的緩和)についての議論は以下の部分である。
 「Participants discussed the potential advantages and disadvantages of setting quantitative targets for bank reserves or the monetary base. Some were of the view that quantitative targets for an increasing reserve base could be effective in preventing deflationary dynamics and useful in communicating to the public the Committee's determination to take the steps needed to avoid such an outcome. Several other participants, however, noted that increases in excess reserves or the monetary base, by themselves, might not have a significant stimulative effect on the economy or prices because the normal bank intermediation mechanism appeared to be impaired, and banks may not be willing to lend their excess reserves」
 「量的緩和政策」のメリット、デメリットの論議はインタバンクやアナリストの方々にはデジャブ的な印象があるかもしれないが、ターゲットを置いた方が対外コミュニケーション上は有用である、という指摘はその通り。現状の漠たる量的緩和(注)は、量の目標がないために緩和姿勢の目安や変化が分かりにくい。特にマスコミは「数字」がないと途方に暮れるもので、中央銀行が「数字」を与えると勇んで報道する。これは国民向けのアナウンスメント効果を強めるもので、現状のように漠たる状態は玄人にしかメリットが分からない面がある。
 「量的緩和政策」をやらなかったのは、金融仲介機能が損なわれた状態では準備預金増やしても銀行は貸出を増やさないかもしれない、という理由からだが、これは日銀の説明に重なるけれども、FRBは市場機能維持のための必死の流動性供給によって既に猛烈に準備預金が増えてしまった状態にあり、ここからさらに増やすことの技術的困難さを感じているようにも思える。
 例えば、現状レベルよりもある程度上にターゲットを置いたとしても、さらに流動性がひっ迫するとそのターゲットを突破する恐れがあり、その都度臨時FOMCを開く必要がある。一方で、これは推測だが、FRB内でもさすがに急激なB/S膨張に危機感もあり、流動性ひっ迫が薄れたらそれに応じて正常化したい、という意向もあるのかもしれない。正常化を我慢してターゲットを維持すれば、それはそれで緩和度が強まるという図式ではあるのが…。
 「Conversely, a decline in excess reserves or the monetary base would not necessarily be contractionary if it occurred in the context of improving financial market conditions」
 金融市場の安定化によって準備預金やベースマネーが減る(結果的にB/Sが縮小)のは、むしろポジティブなサインとして好感される可能性もある。海外の金融ブログで人気が高いCalculatedRiskは、B/S動向もウォッチしているようで、Federal Reserve Assets Declineという簡単なエントリーで、「a little positive among all the grim news」とか評しているので、まあB/S動向の受け止め方はいろいろである。
 マニアックな関心事項としては、準備預金が付利されたことで吸収的な手段になったことが論点になっていなかったこと。付利水準が低いためにさしたる問題ではないと見ているのだろうか。売手みたいな準備預金は増やしても意味がないように思うのだが…。この辺の事情は公開はかなり先になるが、議事録みないと何とも言えないですね。

注 FRBは「量的緩和」という表現はステートメントでは使っていない。B/Sを当面高水準で維持する、とは言っている。金利は0-0.25%にし、B/Sは高水準に維持し、MBSとかたくさん買うよ、という金融政策である。一言ではなかなか表現しにくい。
by bank.of.japan | 2009-01-11 23:58 | 日銀 | Comments(6)
Commented by 通りすがり@東銀座 at 2009-01-12 09:22 x
非伝統的な金融政策に突入して、FRBもこれから何をもって市場とコミュニケートしていくか悩んでいるようですね。インフレターゲットも再浮上しているし、このままだと市場はB/S規模の数字に注目していくような気もします。ナマ議事録を本当に見てみたいものですが、きっとBOJが何度も引用されているでしょうね。ついでに福井さんと白川さんをFOMCのゲストに呼んで議論に加えたらもっとおもしろいのに…。
日本の場合、「当座預金残30兆円」とかが新聞の見出しに踊ると、それだけで何か「日銀も頑張ってるんだ」というムードが出たわけですが、当時は福井新総裁の就任とか、政策会合で反対票とか、日銀をめぐって「瀬戸際ムード」が満ちていて、クロウト目にはかなり怪しい目標設定(コミュニケーション)でも、それなりに機能したと言えるのではないでしょうか?
Commented by PK at 2009-01-12 15:24 x
米銀大手“解体”の恐れ FRB、企業活動禁止・規制も視野

business-i

この問題面白いんですよね。
各国市場と国際企業の大きさと数の問題
結局、各国市場をEUのように大きくする方向、企業を小さくする方向に行くんでしょうね。
米国、EU、中国は良いとして、日本や韓国はどうするんでしょうね?
キムチの食いすぎで韓国は尻の穴がすぼまってるからなあ。
ホントに大局観のないダメな国だ
Commented by bank.of.japan at 2009-01-12 19:12 x
通りすがり@東銀座さん、どうもです。日銀のかつての議事要旨を彷彿させる部分もあったりして、懐かしさも感じるFRB要旨です。ターゲットは中身はともかく対外的には分かりやすいメッセージにはなります。ただ、これだけB/Sが膨張すると、今さらターゲットでもないだろうということかもしれません。

PKさん、どうもです。危機的状況では一般的には企業数は減り、大きくなりやすいと思います。
Commented by PK at 2009-01-13 08:34 x
恐慌過程の進行の仕方は、麻生氏のように企業経営者の方が勘が働きやすく、スピードも出しやすい。
民主党を支える学者や共産主義者やマスコミや労働者では絶対にうまくいかない。
米国は長期間戻ってこなしし、おそらく元には戻らない。世界金融を牛耳っていてやっとヘッジ金融ができていたのが、利払いの原資がなくなるのだから。
今のマスコミは完全に日本を間違った方向に誘導している。
オバマは米国を救うかもしれないが、他国は救わない。
戦前の日本が、ソ連に憧れたようなマネをしてはいけない。
Commented by PK at 2009-01-13 12:28 x
米国がインフレ政策を取るのは、もともと米国というのがそういう国だからだ。同じ政策は日本ではできない。
日本のインフレ政策とは、円高で貿易赤字を出すこと、それから外貨準備を散財することだ。だから、麻生のやっているとおりでいい。
自動車産業は賃下げや海外展開で適応しろ
電機産業はグローバル化が遅れてしまってどうしようもないから国が助けろ
Commented by PK at 2009-01-13 23:12 x
安部首相の時も感じたけれども、渡辺にしても、原体験としてマルクス主義が無いんだね。あの世代になると。
ホントに軽い。
宗教が人を裁き殺戮を犯すとか、マルクス主義が人を裁き殺戮を犯すことに対する やつらの言葉と行為に対する言い様のない怒りと憎悪がない。
ええかげんで、お前らは世間様の面前から消えろよという感情。
朝日のやつら、また始めやがって
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