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オーストラリアの金融政策は、私は全然ウォッチしていないのだが、為替市場では注目されているようだ。オージー・円やっている人が多いからだろうか。予定された利上げがなかったとかで、一部では騒がれたようですね。ウォッチしていないのは、①GDPがとても小さい(スイスぐらい?)②そういう国の金融政策はグローバル的にはあまり影響がない③日銀でも話題にならない④同様にG7でも話題にならない-ため。 ただ、そうは言っても日本人には昔から馴染みの国で、たくさんの人がオージー・円を手掛けるという行為が、あの国の金融政策にどんな影響があるのかな、と軽い興味を覚えてホームページをざっと眺めてみた。で、ちょっと面白いなあ、と思ったのは、マーケットオペレーションの中に「為替」の項目があったこと。その中に為替マニアor介入マニア(私は違いますが)にとっては興味深い記述があった。介入方法を具体的に紹介しておったのです。項目はここ。 その中のポイントは「How Does the Reserve Bank Intervene? 」です。 まず為替相場を操作する場合は以下のようにしている。 「For example, if the RBA was intervening with the intention of influencing the exchange rate, it could enter the broker market directly through the electronic broker market. Because the broker market is the main mechanism used by interbank market participants to trade among themselves, knowledge of the RBA’s presence in the market is immediately available to all active interbank players. They typically also inform their clients very quickly. This ‘announcement effect’ can itself have a significant impact on the exchange rate」 要約→為替相場を動かしたくて介入したい場合は、ブローカーマーケットに直接介入する。そうするとインターバンクの参加者らはすぐに介入が分かってクライアントにしゃべりまくり、アナウンスメント効果がでかくなるんだよね。 それと、オーストラリア中銀は外貨準備の調整(運用?)もやっており、その場合の為替取引(介入ではない)は以下の通り。 「if the RBA was intending to replenish foreign exchange reserves after a period of intervention, the aim might be to rebuild reserve holdings without having a significant impact on the exchange rate. Under these circumstances, the RBA might use an agent bank, so that the market as a whole is not aware of the RBA’s presence」 要約→介入後に外貨準備を補強したい時は、相場に影響を与えなくないので、エージェントバンクを使う。そうすると、介入は気付かれず、相場に影響はない。(エージェントバンク=為替取引を委託された市中銀行=一般的には中銀取引の守秘義務を負う) 世界的には介入と外準調整(=運用含む)を併用する国が多く、このオーストラリア中銀の説明は非常に参考になるので、為替取引に熱心な方はご一読を。日本みたいに「市場に出るのは原則として介入」という国はむしろ例外で、上記の解説はある意味、非常に新鮮に感じる。これぐらいMOFも解説したらいいのにとは思うが、そうすると介入の神秘性が薄れてつまらなくなるかもしれない(威厳も落ちる?)。口先介入、不意打ち介入、びっくり介入、隠密介入、覆面介入、だらだら(ジャンキー)介入、国売り介入、レートチェック、ポジションチェック、チェックまがい、まあ好きにやったらよろしい。 感想 豪州は基本は資源国で、経済も超小さい。それにしては豪ドルの取引規模はかなり大きく、ポンド・ドルぐらいはあるんですかね。これはかなりいびつな感じで、為替投機国ようなイメージがある。本当は、管理フロート色を強めて、資源取引に応じた実需原則の為替売買にとどめるのが身の丈に合っているように思う。オージー・円に突っ込むのはご自由なのだが、移住したいとか思わないのであれば、ボラの比較的高い通貨で短期の投機をやっている、と割り切った方がいいのかも。 ドルを基軸とする管理通貨制度がぶっ壊れ、日本もかなりの社会不安が起きると思うのであれば、穀物と肉が豊富な豪州はラストリゾートの一つとしては有望。いいところらしいですし、英語が苦にならず、日本を簡単に捨てられるなら、淡々と豪ドル投資をやるのがいいかも。ニュージーランドもいいけど、あそこはちょっと寂しい。カナダもいいけど寒そう。
1999年後半の金融政策決定会合議事録が公開された。取りあえず読んだのは9月21日と10月13日の分で、その中で印象的な発言に関して合間をみてツィッターしたのが以下である。
・不胎化介入に関する様々な議論はほとんどナンセンスである=植田委員 ・経済のような生き物を相手にする場合、事実に基づいて考え抜いた理論ならいいが、頭の中の理科の実験室でできたようなものは困る=武富委員 ・(国債価格の支持政策を採らない、という)アコードからの逸脱は臨界事故を起こせ、というのに近いのではないかと感じる=武富委員 ・パン職人にパンを作れと命じるとき、きれいなパンを作れと言っても仕方がない=雨宮企画課長 ・日本の新聞のみならず、海外のクオリティペーパーも妙な記事を書いている=速水総裁 ・日本の介入は、あくまで日銀が政府のエージェントとして行い、外為特別会計の勘定を使うわけである=平野国際局長 ・協調介入とは、日本は日本の勘定を使って介入し、米国は米国の勘定を使って介入することである=平野国際局長 ・(日本が自己勘定で介入する中、介入を米国に委託するのは)それは一般的には協調介入とは言われていない=平野国際局長 雨宮課長(現企画局長)の発言はとても気に入った。ただ、現在の調節方針は、本業でも書いたように、一つのパンは明確な指示があるが、もう一つのパンはディレクティブにはない。白川総裁の最近のフレーズを借りれば「広い意味でのパン」なのであろうと思った。日銀内では「パン類」とか「ピザ」とかいろいろな意見が聞かれた。中には「きれいなパンを作れ」を支持する声もあった。議事録に出てくるパンは「あんこ」が入っているので、アンパンですね。 金融調節課員らは「アンパンパン(&ウーマン)」かなと思った。 平野国際局長(現トヨタファイナンシャルサービス取締役)の説明は介入の基本事項であるので、関心のある方はチェックを。単独か協調かは混乱しやすい。単独で始まる場合、ロンドンやニューヨークで依託が入ると、実施するのは現地中銀なので一見すると協調に見える。恐らくFRBなど自己でやるときは、入った先のディーラーにはその旨言うとは思うが…。 さて、9月21日は例の量的緩和の包囲網に対してそんなものはやらない、というステートメントを出した日である。よく覚えている。「青臭さを忘れた中央銀行のなれの果てがハイパーインフレだ」という名言を聞いた時でもあった。かなりヒートアップしているかと思ったが、そうでもなかった。まあ、文字なので、喜怒哀楽は読めないのだが。 興味津々は以下のところ。 ・速水総裁 グリーンスパンが日本の介入などの問題にどう考えているか聞くようにと依頼しておいたが、「 」という答えであった。…彼は「 」ということを言いたかったのではないかと思う。 白抜きの部分、何を言ったのだろう。激しく興味を持つ。 余談 山下市場局長が短期市場の解説で「…短資預金が増えるということ自体がプレッシャーになっており…」と言っていた。『短資預金』は当時、同僚と私が考えた造語で記事に書いたことがある。日銀内にも広まっているとは聞いていたが、政策委員会でも使われていたとは知らなかった。懐かしい言葉に出会えた瞬間であった。しばし感慨にふけった。
本日の日銀金融政策決定会合と総裁会見。各社報道がどんな見出しになるのか、よく分からないのだが、まあさほどのニュースはなかった。ちょびっとCPIの見通しが上方修正されたが、マイナス物価を「デフレだ!」と問題視する向きにはやっぱりマイナスのままだし、目くそ鼻くその修正でありましょう。総裁会見のトーンも少し明るくなったが、これとて出口戦略とかになる話ではないので、相場材料になるようなシロモノではない。
ということで、エントリーを終わってしまってもいいのだが、微修正の物価見通しに少し細かくこだわって、“CPI対象性のやぶれ”を思わせるところがあったことをマニアックに触れたい。日銀版対称性のやぶれは、こちらをご参考にしてもらうとして、端的に言えば、物価判断に上方バイアスめいたものがうかがえることである。CPIがちょっとプラスになったら、プラスだプラスだと騒いであっという間に量的緩和を解除してしまい、その後マイナスになったら「ゼロ近傍である」と言っちゃったあれである。 で、今回の物価見通し。少しばかり上方に修正されたが、主因は「原油高」。これで2年先のCPIが0.2%上方にシフトするのである。まあ、ロジックとしては新興国が成長して原油など国際商品市況が上昇するでしょう、というものだが、そうなるかもしれない、そうならないかもしれない。しょせん、原油のようのな相場物はどっちにいくか分からないもので、普通なら分からない物は「横ばい」とみなすもの。 そうしなかったのは「横ばい」とすると決めていないから。市場の相場観を参考にしたんだと思うのだが、これはある意味、市場が見込む政策金利の経路を参考にして利上げしてしまう中央銀行の円環性(自分の尾を追う犬)症候群につなが得る話(もちろん、今の日銀はそんなことは考えずに、単なる見映えを気にしたのかもしれないが)。 しかし、 「原油高」を取り込むと以下のようなことな論点が浮上すると思う。 ・為替(例・円高)は織り込まないの? ・為替は分からないけど、原油は将来まで分かるの? ・原油が下がったら、見通しを下げるの? ということで、物価判断するときは日銀は上を見やすいCPI対称性のやぶれ感がうかがえた。なお、声明では「原油価格高の影響などから」とちゃんと「など」というヘッジが入っており、ああ言えばこう言う体制は一応は整っているので、この点で日銀を追求しても何も出てきません。念のため。 政権・与党は大物などがいろいろ問題抱えており、日銀にあまりかまっている暇はないので、市場が総じて平穏なら金融政策は取りあえずは何もないんじゃないでしょうか。そういう相場観です。与党の出方を織り込むのは私には不能です。
日銀レビューで「新興国の国際資金フローと資産価格の変動」というのが出た。こちらである。詳しい内容は直接ご覧頂くとして、ここではこのレビューに引っかけてキャリートレードと金融政策の関係を簡単に考察してみたい。キャリートレードは過去何度が取り上げたが、私はあまりこのトレードを重視する立場にない。簡単に言えば、マスコミも取り上げるし、相場ネタとして過大にはやされている面があって、金融政策運営上は極論すれば無視して良いんじゃないか、と思っている。
同レビューもこのタイトルからしてキャリートレードは外すわけにはいかず、一応は項目を作っている。その中ではやっぱり「キャリートレード全体の市場規模を把握することは難しい」とし、一例として「通貨先物を利用したキャリートレード」を紹介している。お馴染みのシカゴIMMのポジションである。キャリートレードという用語はあちらこちらで盛んに踊るが、実態はよく分からないもので、シカゴのIMMなどただのシャドーかもしれない。レビューではこの後に、この為替のキャリーの話が続くが、まあそこに限れば参加者の自己責任で勝手にやれば良いので、儲けるなり、損するなり、どうぞ、という世界であろう。 為替の部分はこんな感じ→「キャリートレードの超過収益を自己実現化させ、新たな投資家を更に呼び込むという循環が発生しているようにみられる。この過程では、UIP から乖離し続けたポジション構築を永久に続けることはできないにもかかわらず、ポジション巻き戻しに伴う投資通貨の減価リスク(調達通貨の増価リスク)に対する投資家の認識が低下していく傾向がある」 逃げ遅れた者がババを引く、という自己責任。 重要なのはこの部分。「金融緩和が、どういった経済主体のリスクテイクを後押しし、経済に影響を与えるかという点については、バランスシート問題の有無が重要なポイントとなる。米国の家計はバランスシート問題を抱えているため、過去に比べると、金融緩和が米国内の家計支出や不動産価格を通して、景気を刺激する効果は弱まっているとみられる。一方、米国など先進国の金融緩和は、新興国自身の金融緩和と相俟って、バランスシート問題を抱えていないグローバル投資家のリスクテイク(新興国への投資など)を促し、同じくバランスシート問題を抱えていない新興国経済に対する景気刺激効果を強めているように窺われる」 ①キャリートレードは本物だ。金融政策で重視すべし、という場合 米国はバランスシート問題で緩和効果がさほどないにしても、低金利を止めるわけにはいかない。キャリー重視論では、その結果が問題のない新興国のバブルにつながることになるのだが、じゃあ、米国はどうれば良いのか。FRBは米国の中銀で、自分の国のために低金利をやっているのだが、新興国のバブルになるからと言ってそれを止めるのか。止めてもいいけど、米国の中銀とは言えなくなる。つまり、キャリー、キャリーと言い過ぎると、各国中銀の金融政策は独自性を薄めて、世界の金利は一本という方向にいってしまう。 ②キャリートレードの実態は分からん。考えてもしようがないのでまあ忘れろ、と言う場合 この方が各国は国内経済に専念して金融政策を運営できる。新興国のバブルは、当該新興国になんとか対処してもらう、というのが筋。キャリーを脇に置いておけば、バブルの原因は拡張財政or為替ペッグor未成熟な金融市場とか色々あるはずで、まあそれらを修正してそれでもバブっていたらキャリーを考えるか、という順番であろう。 ということで、結論は「今後、新興国経済が、こうした(バブって失敗した)国々と同様の問題に直面することを回避するには、プルーデンス政策や規制で補完しつつも、拡張的なマクロ経済政策を適切なタイミングで修正していく必要があると考えられる」であります。→中国のことですね、これは。 少しツィッターのノリが入った文体であるのはお許しください。
ツィッターより。ツボだったものや、気になったものや、その他の話題などを雑感的に。
①マスコミ関係 ActiveIndexさん 「個人的印象 Bloomberg:やりたいことは判るが、まさかそこまでやるとは信じられない。 Reuter:そうなったのも判るし、その程度だということもよく判る。 Quick:そうなってしまうのは判るが、他にやり用は無かったのか」 朝日新聞さん 「『京セラの稲盛さんが日本航空CEO就任へ』も大きなニュースです。京セラって何だ? 稲盛さんって誰だ? という人にもわかる記事が出ます」→マスコミの想定する読者像として参考になる。いわゆる受動的読者に対してどういう情報を出せばビジネスとして成立するのか、しないのか。現状は絶賛縮小中であります。 ②中国 これはもっぱら私が呟いたもの。預金準備率を引き上げたが、為替をペッグしているので(トリレンマの状態)金融政策の自由度は乏しく、自由になった金融政策運営的な引き締めという解釈は難しい。為替ペッグによる介入で生じた余剰資金の吸収(不胎化)のようなイメージがある。 で、関連で中国のバブルについて。「窓口指導」で投機を監視・統制しているが、①裁量的であるが故に指導側に過大な権限が発生し、不正の温床になるのではないか②ミクロのマネートラッキングは難しく、迂回されたものまで本当に抑止できるのか③日本も窓口指導下でバブルが起き、当時は外貨建てインパとか指導逃れが横行④規制で縛ったら(総量規制)、住専が炸裂した⑤投機で血なまこになった人間は抜け穴を必ず探すのではないか-などと思った。 そこで、トリレンマを抜け出して、マクロ的な引き締めを考えたが、複数の方々との意見交換で、①人民元を緩やかに自由化すれば通貨先高感からもっと金が流入するのではないか②利上げしていけば金利高観測でもっと資金が流入するのではないか-といったバブル助長の可能性が指摘され、だったから一気に切り上げ、引き締めとなるが、そしたら経済が死んでしまう、というシナリオも想定された。 バブルは取り付かれたら崩壊するまで離れない。子泣き爺さんのようであります。 ③強制捜査 鹿島まで入った。どうなるんでしょう。
一発目に追記 「デフレ宣言」した政府が、円安に誘導した財務大臣の発言を問題視するのはおかしい。むしろデフレ脱却に資する、というのが整合的ではないのか、と政府の立場なら思う。
菅大臣の円安誘導発言、つまり「口先介入」がいろいろと報道されて、菅氏がまずい対応を取ったかように扱われていた。ただ、この件で総理がコメントする場面がニュースに出ていたが、全体を聞いた印象では問題視するような印象は受けなかった。今もNHKが「波紋が広がっている」と報じているが、正直、この件はそれほど大々的に取り上げる問題なのか、という気がする。意図的に騒ぎを大きくしているきらいがある。 報道では、発言で相場を動かしたこと自体を問題にするかのようなものもあったが、つい数年前は介入しまくりで、それに比べれば発言でちょっと動いたこと自体は大した話ではない。口先介入はただの方法論で、あまりやらない方がいいのは、逆に相場の安定化が難しくなり、しまいには介入の消耗戦に突入してしまうからで、基本的に水準には触れない方がいいよね、という経験則があるからだ。つまり、相場との対話における技術論に過ぎない。逆説的には、口先がメチャうまくて相場が安定できる能力があるなら、やればいいのである。相場を幻惑した榊原財務官とかドル買い、ドル売り両方やっちゃているし。溝口財務官など30兆円も打ち込んでいる。 私は、どうせうまくいかないのだから、と思っているので、口先でも実弾でも介入という方法には否定的だ。その上で、菅大臣の今回の発言を(かなり無理して・笑)好意的に解釈したいのは、前任の藤井大臣が広めてしまった円高容認というイメージを多少なりとも払しょくできた可能性があるからだ。 経済的観点では、今の日本経済にとっては円高は困るのであって、なるべく円安気味に推移するのが望ましい。ところが、藤井大臣の発言でドル売りが仕掛けられやすい地合いが定着した。最近でこそポジション調整でドルは反発したが、再びドル売りの流れになると「どうせ介入はないんでしょ」となめられてしまう。その流れが今回の発言でいったん断ち切られたら、良かったと評価すべきであろう。 問題は今後の対応だ。「この政府は円高が行き過ぎたら介入してくるに違いない」と市場に恐怖感をもたらすことができるかどうか。市場が調子に乗ったら、どっか効果的なポイントでガツンと食らわせる介入をやれる覚悟があるかどうか。後、相手のある話でもあり、そこら辺の調整ができるかどうかも肝であろう。 繰り返すが、私は介入支持派ではない。為替はまともに相手するマーケットではないので。それに米国が露骨にドル安政策取ったら万事休すでしょう。対抗介入したら米国債無制限引き受けとなり、米国の思う壺。米国がそうしないことを祈りつつ、のらりくらりと為替に的を絞らせない対応をうまくやるしかない。 そもそも論だが、通貨政策に責任を持つ担当大臣が発言で為替を動かしてしまうのは問題のなのだろうか。介入して動かす権利を持ってるのに。繰り返すが、今後の対応は難しいけど、円安に振れて良かったんじゃないの?
FRBが「預金ファシリティ」という吸収手段を導入する。既にリバースレポ(試験実施済み)もあり、吸収手段の品揃えを充実化させている。遠い将来には国債&MBS売り切りなどの実施も視野に入れているのだろう(できるかどうかは不明)。ここではこれら吸収手段の有効性はさておき、もっと基本的なこと、即ちなぜ手段を増やす必要があるのかを簡単に説明したい(基礎編ですので、資金関係者は無視を)。
まず、そもそもお金に色は無いので、供給も吸収も手段はそれぞれ一つでいいor少なくていい、と考えられる。インタバンクが一つの大きな水溜りで、そこに必要量を出す、または吸い上げれば、金融調節の基本作業は終わる。出すor吸うのは、要は水溜りの量の加減さえできればいいので、手段は何でもいいはず。極論すると、一つの手段で出し、一つの手段で吸えればいい。 しかし、このインタバンクは見た目は「一つの大きな水溜り」だとしても、水溜りの中は微妙に分かれており、意外に水の流れが良くなかったりする。実は、水溜りは幾つかに分かれ、それぞれの間の水の流れが悪いと、中央銀行が必要な量を投げ込んでも、水溜り全体に浸透しない可能性がある。この時、中央銀行がやる対応は大きくは二つある。①放置する②親切にする(分かれた水溜りそれぞれに金を投げる)。 ①を選ぶと、金の出し&吸いは適当で、お金が届かない水域の金利が上がったり、逆に下がったり、短期金利のボラは総じて高くなる。②は、ボラは低くなるが、中央銀行の手数は増える。①の典型はFRB、②はわが日銀である。ECBはちょっと違うが、これは別途必要があれば解説したい。 で、FRBである。ご案内のようにもともと調節手段は少なく、国債系のオペでやや大雑把に調節をやっていた(FF金利の上下動はあまり気にしない)。マーケットは直接金融が発達し、FRBから遠い水溜りの市場関係者はその中でいろんな担保を使って自立して資金繰りをしていた。ところが、バブル崩壊で担保がうまく使えなくなり、各水溜りは干上がる危機に直面した。FRBはこれは大変だとばかり、各水溜りに向けた供給手段を装備。おかげでB/Sは急膨張したのである。ちらばっていた水溜り(で使われていた担保)をそのまま腹に抱え込んだわけだ。 吸収手段を増やしているのは、急膨張過程で実施した国債・MBSの買い切りが資産に長期滞留し、これは売り切りによる吐き戻しが当面はできないため。買い切りで放出された金はいろんな参加者に散っているため、満遍なく吸収するには手段は多い方がいい。例、日銀の売手は銀行が中心だが、国債売り現(リバースレポに相当)は証券会社が多い。 日銀は昔からインタバンクのいろんな資金取引市場(水溜り)に全方位のオペを実施し、これは緻密に金利を誘導したいためでもあるが、ある意味では優しい対応を取ってきた。逆説的には、やさしいから市場内の資金偏在が温存され、あまり資金循環の効率がよくないという面もある(なので市場機能論は嘘っぽいとも言える)。 FRBは放任的調節で発達した各水溜りがいきなり壊れて一気に日銀化し、しかも壊れ方が激しかったのであっさりと(供給の数で)日銀を追い越し、今は落ち着き始めたので急速に巻き戻しのインフラ整備をしている、という状況だ。この巻き戻しがうまくいくかどうかはよくわからない。かなりターム物金利が上がる気がするのだが、これは別の機会にでも考察したい。 FRBの取引先も随分増えたが、これは干ばつによる難民を受け入れたような措置でもある。
すっかりツィッターの人となってしまい、こちらの更新が間延びしておりますが、頃合をみてエントリーをアップしたいと思っております。
みなさん、今年もよろしくお願いします。 金融政策の行方は未知数。鍵を握るのはただいま漂流中の民主党政権の出方次第でありましょう。どうなることやら…。 ツィッターはhttp://twitter.com/hongokuchoです。
Economist's Viewにマーティン・フェルドシュタイン教授の金相場についての見解があったので簡単に紹介したい。
・最近、ドバイに行ったら、空港でたくさんの旅行者がゴールドのコインを買っていたのが印象的だった。 ・個人はコインのほか、延べ棒とか金ファンドとか買い、機関投資家も買っているようだ。 ・では、金投資はインフレや通貨安へのヘッジ手段として有効なのだろうか? ・簡単に言えばノーであろう。 ・インフレヘッジとしては他にもインフレ連動債などの手段がある。 ・通貨についても先物がある。 ・金自体も過去の推移を見るとヘッジ手段としてはそれほど有効だったわけではない。 ・金はリターンを生まない純粋な投機商品だ。 ・ボラは非常に高く、目先急落・急騰あり得るが、Caveat emptor(買い手は要注意) 金は買ってもいいけど、短期の投機として割り切るべきだろう、というスタンス。私もこれに近いが、金融財政政策が急膨張し、通貨の信認が揺らぐドル圏の人々には実物資産としての金は魅力的であると思われる。ただ、この金買いが怖いのは、相場の上昇自体がドル通貨の信認低下を象徴し、人々の不安を掻き立てる側面があること。管理通貨制度における通貨の信認は「信じる」、「信じない」の両極端になりやすく、金上昇はそれ自体がドル基軸の通貨体制を崩壊に至らしめるリスクをはらむ。だから、金の上昇は怖いのではないか、と私は思っている。 金買いがインフレまたは通貨安のヘッジとして本当に機能してしまう世界は、社会秩序がかなり混乱した状態で、先進国でも場合によっては食糧調達に支障が生じ、局地的に暴動とか起こり得るのではないかと思ったりする。その意味で、金買いの意味を問うフェルドシュタイン教授のエントリーは何となくホッとする。
まあ、あまり確たるロジックは持ちようもないと思われるので、理詰めで金融政策スタンスを理解するのは難しくなっている、という状況であろう。これは民主党政権がフラフラし、求心力もなく、何かを決めようというわけでもなく、何かその場の雰囲気で思い付きのような事をしており、これにある程度金融政策も付き合わざるを得なくなったからだと思う。
まず、流れから言えば、ある日突然デフレ宣言が行われ、そうこうするうちに総裁と総理がなぜか会うことになり、デフレ宣言でマーケットは盛り上がっていたこともあり、そうなってしまうと政府・日銀の足並みが乱れているという形を示す訳にもいかず、臨時会合が行われて新型オペが決まった、という展開である。 この展開の筋書きを誰かが前もって描いた感じはなく、なぜかそうなってしまった、との印象を受けた。もとより、政権が確たる経済運営ロジックを持っていれば、金融政策もロジカルに対応できるのだろうが、そういう感じはまったくなく、日銀としても反射的に取りあえずメッセージだけは出しておこう、というスタンスのように受け止められる。 ご案内のように日銀サイドにはゼロ金利や量的緩和は取りあえず選択肢になく、採用されたのは10年ぐらいまえに議論されたターム物誘導の一種としての固定金利オペで、なんとなく時間軸的な政策の方向に流れている、という感じであろうか。今後、どうなるかはフラフラする政権の出方次第で、フラフラしているので金融政策がどうなるかは読めない。 テクニカルには①固定オペの期間を延ばす②腰だめの数字の10兆円(固定オペの総額)を増やす③「物価安定の理解」明確化の時間的政策の側面を強める-などが単独ないしは合わせ技的に考えられる。どうなるのかはフラフラ政権の出方や金融経済物価情勢次第。神のみぞ知る、であります。 いずれにせよ、ロジカルにこの状況を深掘り(分析)しても何も出てこないのは確か。
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